25 #県外から就職した方のインタビュー

「福祉の仕事なんてやるもんか」と思っていた私が続けている訪問介護

サービス提供責任者 村上 美絵子 さん

勤務施設
ヘルパーステーションえーる(南相馬市)
取材時期
令和7年9月

Chapter.01

一対一で向き合えるのが楽しい

 介護の仕事に就こうと思ったのは10年以上前です。当時、私は20代で東京都内で乳酸菌飲料を宅配する仕事をしていました。担当のエリアは大規模な団地。そこは一人暮らしの高齢者が多くて、お手伝いしてあげたいと思うことがたびたびあって。「それなら介護の仕事の方がいいのかも」と思い、介護職員初任者研修を修了後、30歳の時に小規模多機能型居宅介護事業所に転職しました。小規模多機能はデイサービスやショートステイに加えて訪問介護も経験できるので、自分に向いている仕事が分かるかなと思ったからです。しばらく働いてみて、私には「訪問介護」が合っていると思い、それからはずっと訪問介護をしています。訪問介護は利用者さんの自宅に訪問し、食事や排泄、入浴、移動、家事の介助などを行うので、限られた時間でも一対一でしっかり利用者さんに向き合うことができます。私たちはサービス中に、利用者さんに必ず一度は笑ってもらうことをモットーにしています。そのためにみんなが日々勉強です。最初からは難しくても、利用者さんと深い信頼関係を築いていきたいと思っています。

Chapter.02

訪問介護こそチームプレイ

 3年前に私の実家がある南相馬市に家族と移住しました。高齢の両親が心配になってきたことや震災後に自分が何もできなかった後悔など、理由はいろいろあります。移住については、他県出身の夫や子どもたちとも何度も話し合って決めました。こっちに来て子どもたちはのびのび楽しそうにしていますし、夫も仕事とプライベートをしっかり分けて休日を楽しむなど、ゆったりとした時間が過ごせています。
 Uターン後も「訪問介護」の仕事に就くことは決めていて、東京にいるうちからいくつかの南相馬の訪問介護事業所に求人の問い合わせをしていました。「えーる」に電話をした時、対応してくれた紺野代表がとにかく明るくて、話しやすくて、「ここで働こう!」と決めました。その時の自分の直感は間違っていなかったと、今でも思っています。実は訪問介護こそ、チームプレイの一番の見せ場かと思います。一人で悩んで一人で判断することはほぼないです。困ったら管理者やケアマネジャーに指示を仰いだり、事業所に帰ってくる度にスタッフみんなで報告・相談したりと、関わっている人みんなのチーム力で介護をしています。とにかく相談し合える環境にいます。

Chapter.03

仕事でエネルギーチャージ

 「えーる」のスタッフは、みんな利用者さんへの愛情があふれていて、家族のような気持ちになっています。一緒に料理をしたり掃除をしたりする中で、利用者さんから教わることもたくさんあります。だからこそ、本当の意味での「お別れ」が来るとしばらく気落ちしてしまいますが、そんな時も一緒に働くスタッフと思い出話しをしたりしながら前を向いていくようにしています。現在は介護福祉士を取得していますが、いずれタイミングがきたらケアマネジャーの資格取得も目指したいと思っています。
 実は私の両親には聴覚障害があり、いわゆるヤングケアラーでした。若くしてふるさとを離れた時は「福祉の仕事なんてやるもんか」と思っていましたが、実際に働いてみるとそれまでのイメージとは違うことが多いと思いました。人と関わるのがとにかく楽しいうえ、自分の家族にも活かせる知識が得られます。訪問介護は1件ごとに達成感を味わえますし、利用者さんから「ありがとう」の言葉をかけられるだけでエネルギーをチャージできます。ママ友を誘ったら「料理が苦手だから無理」と言われましたが、訪問介護は難しい料理をする必要はないんです。利用者さんと一緒に、その家庭のやり方に合わせて行う。ぜひ、いろんな人に挑戦してもらいたいと思っています。

上司・同僚からの声

村上さんってどんな方?

上司の方
 テーマパークでキャストをしていた経歴もあるせいか、サービス精神が旺盛でいつも周りを明るい気持ちにしてくれます。一方、聴覚障害のあるご両親を小さい頃から支えてきて、多くの葛藤を乗り越えてきた人間味のある実直な人です。子育てと介護で大変な時期なのに、時間や健康管理がきちんとできることも素晴らしいと思います。Uターンを決意し、戦力になってくれたことに感謝しています。ヘルパーステーションえーる代表・紺野ちか子(こんのちかこ)さん
上司・同僚の方
とても穏やかで、芯のしっかりした人です。周りの人をよく見ていて気配りのできる方だと思います。
利用者さんへの思いやりはもちろん、同僚に対しても優しい言葉をかけてくれるので職場の雰囲気がいつも和やかに感じます。一緒に働くと、気持ちが落ち着いて安心できる存在です。これからもともに支え合いながら、良い環境を作っていけたら嬉しいです。普段は言いませんが、日頃の感謝を込めて、いつもありがとう。管理者(上司):西畑美衣子(にしはたみえこ)さん、介護士(同僚):風間幸恵(かざまゆきえ)さん

あとがき

「訪問介護をしていると臨機応変な対応力が身について時間の配分もうまくなるんですよ。」と目を輝かせる村上さんや職場の皆さん。明るく積極的な会話から、仕事での経験を自身の成長へ繋げられる奥深さを感じました。(川添)