27 #地域を支える方のインタビュー

働きやすい職場の実現を目指す「見せる化」したOJTの仕組みと「介護テクノロジー」の導入

特別養護老人ホーム リリー園 さん

取材時期
令和8年9月

―――温暖で太平洋の潮風が心地よい楢葉町。福島県12市町村移住支援金や家賃補助金などの制度に加えて、移住にまつわる町のサポートも充実しています。今回は、県外移住者や外国人の職員を数多く受け入れている特別養護老人ホームリリー園(以下「リリー園」)でお話しをうかがいました。

Chapter.01

移住者支援とセットの求人活動

 リリー園は、東日本大震災で全町避難を余儀なくされた楢葉町にある特別養護老人ホームです。2016年春に再開して以来、少しずつ利用定員数を増やして地域のニーズに応えてきました。現在は利用者90人に対して約30人の介護職が働いています。
 施設では、介護職の確保のために自治体の移住支援の施策とセットで県外の求職者に働きかけるとともに、外国人介護人材の受け入れも進めてきました。佐藤努施設長は「外国介護人材は今の介護に欠かせない支えになっている」と話します。
 加えて、総務省が推進する特定地域づくり事業協同組合制度に基づいて設立された「ならはマルチワーク事業協同組合」の人材派遣も活用しています。これは、組合が雇用した移住者などを、組合員企業の農業やホテル業、地域産業に派遣する制度です。リリー園では派遣される人物の経験や知識を活かして、施設管理などの場でフレキシブルに活躍してもらっています。

Chapter.02

やる気を引き出す仕組みづくり

 経験やスキルに幅がある職員等を育成しながら、高いサービスの質を保つためにリリー園で取り入れているのが、「見せる化」したOJT(On-the-Job Training: 職場で実務を通して行う教育)の仕組みと「介護テクノロジー」です。リリー園では、職員が各自やるべき業務をリスト化し、OJTの内容を「見せる化」しています。これにより、「自分が何を担当するのか」「現段階でどこまで業務を理解しておく必要があるのか」が一目でわかるようになりました。
 また、業務割り当てを作成する際には、利用者の居住エリアごとにトレーナー役の業務リーダーを定めています。リーダーが一人ひとりの目標にあわせて助言し、成長を支える「コーチング」もOJTの一環として行っています。リーダーには手当を設け、モチベーションアップにつなげるとともに、今年度からは人事評価制度とも連動させてステップアップできるようにしました。施設長は「リーダーを都市部並みの待遇で雇用できるような仕組みづくりを考えていきたい」と職員の働きやすさやモチベーションにつながる職場づくりを追求する思いを話されました。
 介護テクノロジーの導入にあたっては、各利用者の自立度や特性を見極めながら、居住スペースの住み分けを見直し、離床センサーなどの利活用を進めてきました。職員間でのスマホアプリを活用した情報共有ツールも利用しています。
 ネパール出身のデウバ・インドラさんは、「コーチングでは、自分の改善点ばかりでなく、できている点なども教えてくれるため、いいところを知ることができてうれしかった。介護テクノロジーの活用によって記録や情報の確認がしやすくなり、仕事がスムーズになった」と、二つの取組の効果を実感しており、「安心して働くことができています」と笑顔を見せました。

Chapter.03

リーダーの情報交換で効果的に

 施設ケアマネジャーの笠間奈津美さんは会津地方の出身です。リリー園に就職して1年半、1対1で先輩ケアマネジャーのフォローを受けて仕事を覚えてきました。「介護職のみなさんは、複数のリーダーがきめ細やかに情報交換することでOJTの効果を高めているので、頼もしく、信頼してお任せできる」と話します。管理栄養士の木田朱香さんは、いわき市出身で東京からのUターン組です。情報共有ツールがあることで「他職種からの反応がすぐ返ってくるので心強い」と感じているそうです。同じく栄養士の山本莉沙さんは仙台の大学を卒業後、少しのブランクを挟んで子育てと仕事を両立中です。就職して1年、「周りの人が親切に教えてくれるので、すんなり職場に馴染むことができた」と振り返ります。
 「リリー園の魅力は介護職だけでなく、ケアマネ・生活相談員・医務・栄養などの多職種が連携し、利用者を支えていること。忙しくても意思疎通を大切にすることでよりよい関係づくりができている」と勤続10年の介護主任・伊藤研太郎さんは話してくれました。

Chapter.04

楽しみながらみんなが集う『福祉の観光地』

 「介護だけでなく、いろんなことに興味がある人に来てほしい。施設が『福祉の観光地』みたいになって、みんなが集う場になるといいな」と施設長。リリー園は、面会や外出も比較的自由にできる施設です。地域交流も大切にしており、この夏には『涼み処』としてロビーを開放する試みを行いました。「例えば、利用者が売店で店番をしていたりするなど、全国から観光や視察の人が来るような取組を考えています。夢を語るのは自由です。これからの新しい特別養護老人ホームの在り方を示し、発信していくことで、ここで働きたい人も増えるのではないかと期待しています」と施設長は力強くしめくくりました。

あとがき

地元で長く暮らす人、町外から移り住んだ人、海外から来た人。様々な背景を持つ職員のみなさんが、それぞれの経験を持ち寄って働く姿が印象的でした。出身は違っても、リリー園で地域を支える一員として働く。その前向きな思いが、取材を通してまっすぐ伝わってきました。(担当:横澤)